はなしのたね。2018.vol.10
1:「理想の身体とは」のはなし。
 今回はちょっとエグい内容を含むので苦手な方はご注意を。「身体完全同一性障害(以下、BIID)」という病があります。これは「五体満足」な状態に違和感を持ち、自分の身体の一部を切断したい願望にとらわれるという、何とも恐ろしくそして理解しがたい病気です。
 世の中には聞いたこともない病気や、治療法がない病気が山ほど存在しています。BIIDはまさにそんな病気のひとつでしょう。「やっと左足を切断することができた」と嬉しそうに語るのは、ある外国人の高齢男性です。彼は子どもの頃から左足が自分の身体の一部ではない感じがしていたと言います。彼の子どもの頃の日記にはその悩みが記されており、その頃に書いた自画像も片足の姿です。BIIDの人々は大抵、幼少期から特定の身体の部位が自分の身体の一部ではないという感覚を持っており、それを切り落とそうと努力するのです。
 彼はある日、スーパーでドライアイスを大量に購入してきてバケツに詰め込み、そこに左足を突っ込んで半日かけて凍らせました。いっとき流行ったアイスバケツチャレンジどころの騒ぎじゃありません。下手をしたら命までも落としかねない状況。当然の如く凍傷になった彼は、救急病院に駆け込み切断手術をしてくれと懇願します。しかし切断手術を喜んで引き受ける医者など存在しません。ドクターは何とか切断せずに治療しようとしましたが、「切断してくれないならまた同じことをする!」という彼の覇気に気圧され、やむなく切断手術をしたのです。通常では考えられない話。

2: 
 「幻肢」という現象があります。事故や病気で手足を切断された人の一部は、存在しない手足がまだ存在している感覚を持ったり、ないはずの手足に痛みを感じたりします。これは「幻肢痛」と呼ばれ、BIIDとはちょうど真逆の状態と言えます。つまり人間は、頭の中にある自分の身体イメージと、実際の自分の身体とのズレが不快感や痛みにつながるのです。ならば我々は「五体満足」な状態が単に頭の中の身体イメージというだけで、BIIDの人達にとっては体の部位が欠損している状態が正常だということです。いや、「欠損」ですらないですね。彼らにとっては欠けているわけでも、損なわれているわけでもないのですから。正解とか間違いとか、一般的な常識とか、もはやそういう次元の話ではないのです。理想の身体とは一体何なのか・・・。背が低いとか、胸が小さいとか、目の位置がどうこうとか、鼻の高さがどうこうとか、そんなことを言う前に、自分の体の形状が脳内のイメージと合致しているということに、まず感謝をすべきなのかもしれません。
 パラリンピックで活躍する選手たちは、様々な事情で障害を抱えているわけですが、そういう状態になったからこそ、人生を賭けて打ち込める競技と出会い、金メダルという最高の栄誉を手にするチャンスに恵まれたのです。それはむしろ、羨むべき人生と言えるでしょう。四肢の欠損は望ましくない、と勝手に決めつけている我々の価値観こそが、優越感から来る差別意識なのではないかと思うのであります。(N)

3:「アタマの体操・シケパ(脳トレ編)」
~脳を活性化しアンチエイジングに最適です。お役立て下さい。~
【問題】
 ①□に入る数字は何?    
 ②車が停まっているのは何番?      
 ③○に入る文字は何?

4:前回の答え
①マゴコロ(孫コロ)、②11月11日(靴下の形、+-、武士の士は十と一)③胸キュン
5:ハナタネ寄席
★「世の中、なんで男と女だけなんだろ。二択じゃ寂しいよな」としみじみ語る友人に「(俺は女性しか選ばないから一択なんだけど)」と心の中で呟いた。まさか俺もあいつの選択肢の中に・・・?